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2019.09.17
コラム
男性育休促進事業を10年近く行って思うこと(つかごし理事)
育休を検討していた小泉進次郎議員が大臣になったことで、さらに男性育休の話題が増えてきた。私は男性育休促進事業「さんきゅーパパプロジェクト」を2010年に立ち上げてから、10年近く男性促進事業を行ってきている。その中で、自治体の首長が取ったとき、経営者が取ったとき、国会議員が取ろうとしたとき、同じような議論が繰り返されており、今の議論や賛否にも既知感はある。それでもなお、まだ少数派である男性育休を、取りたい人が取れる社会にアップデートするためには、繰り返し話題にして一人でも多くの人たちで咀嚼していくことは大事である。「父親は産むわけではないから休む必要はない」「経営者自身が取るより、まずは従業員が取れるようにすべき」「首長は、国会議員は、市民や国民のための仕事を最優先すべき」などなどなどこうした役割論で議論されてくると、職業人の役割、家庭人の役割、生活者消費者の役割、地域住民の役割など、通常一人の役割は複数あるから、どの役割が重要だという話には閉塞感を感じる。どの役割も全うして生きたい、一億総活躍社会ならなおそうだろう。「新しい命が生まれたら家族で迎える」「子育ては家族で一緒にスタートする」「特に男性は産む性ではないからこそ、子育てに専念する特別な時間が必要である」、男性育休は役割論ではなく、こうした文化を創ろうという話しなのではないかと思っている。私が比較で例えるのは「忌引き」である。「あなたは喪主でないから休む必要はない」「経営者自身が取るよりまずは従業員が取れるようにすべき」「首長は、国会議員は、市民や国民のための仕事を最優先すべき」これに先ほどの役割論で議論されることはあまりない気がする。忌引きは育児休業制度のように法律で決められているわけでないが親族が亡くなったら家族で命を送り出す文化がある。大リーグでは産休制度「父親リスト」があるようにスター選手でも子どもが生まれるタイミングでは休む。育休制度はなくても子どもが生まれるタイミングで仕事をしていたら「何やってんだ、早く帰れ!」と言われる国もある。首相や大臣が育休をとる国もある。文化は一定の数の人が同じ経験をしないと形成できないと言われている。だから、もしこの文化を作るのであれば、それぞれの立場にいる男性たちがこれに挑戦していくことが大切。国会議員は国会議員の立場で、経営者は経営者の立場で、会社員は会社員の立場で、自営業は自営業の立場で、さまざまな立場にいる男性たちが子どもが生まれたら休む経験をする。そして、その周囲で快く受け入れる人たちが増えていく。休むのだから、周囲に迷惑はかかるだろう。しかし、迷惑かけても仕方がないという、迷惑レベルの上げ下げの問題。その許容範囲に父親の育休も入れていく。だから、小泉議員が育休を取れば日本も取りやすくなる、なんて傍観者のような期待をするより、小泉議員も国会議員の立場で新しい文化を創ろうとしている、私たちも私たちの立場でやれることを探そう、という発想が大切なのではないか。一人一人が半径五メートルの世界で子どもが生まれそうな男性を見つけて、周囲にいる人たちと一緒に声をかけていく。「育休はとるの?」ではなく、「育休はいつとるの?」と。「迷惑かけるなよ」ではなく、「そのために協力できることは?」と。FJではその文化促進と環境づくりのためにさまざまなプロジェクトを展開している。イクボスプロジェクトでは、職場の管理職改革、働き方改革は引き続き進めていく。実際、イクボス企業同盟では企業レベルで新しい文化が醸成されてきている。さんきゅーパパプロジェクトでは、多様な育休タイプを紹介している。https://www.fathering-japan-thankyoupapa.com/パパ育休ファイル/父親になるための教育環境として、父親学級や両親学級の数が足りていない。現在の両親学級も質の面でアップデートが必要だ。それ以外のプロジェクトや団体とも連携してすすめていきたい。子どもが生まれたら休む文化づくり。令和時代にみなさんと一緒につくっていけたらと思う。(ここでの「育休」は、議員・首長・経営者・自営業も含め広い意味で「育児のために専念する時間や期間」とする。)ファザーリング・ジャパン理事 つかごしまなぶ
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